バルサが圧倒? レアルの意地も?
名波浩と宮本恒靖がクラシコ大予想!
宮本「今日はよろしくお願いします」
名波「なかなかこうしてゆっくり話す機会もないからな」
宮本「早速ですが、名波さんはリーガもかなり見られていて、バルサの本を書いたことがあるっていうぐらい、バルサ好きだと聞きましたよ」
名波「まあ、俺は人もボールも動くサッカーが好きで。小さい局面だけじゃなく背後を狙う意識とか、ボールの距離を変えて局面をガラッと変えたところに人数をかけていくとか、そういう魅力が一番わかりやすいのがバルサだよね」
宮本「そういうフィロソフィーがある」
名波「クライフがベースだと思うんだけど、ライカールト、グアルディオラときて、それが確定的に作り上げられた」
宮本「では、名波さんがその歴史上で一番好きなバルセロナと言ったら?」
名波「どれかなあ……いろいろあるけど、やっぱりシャビ、イニエスタのいたときかな。俺自身が似たポジションでやっていたので、彼らの運動量やボールタッチ数はいつも気にして見ていた。その特長を周りの選手もよく理解していて、必ず手助けするような顔出しや、突破の動きを入れていったりして。ロナウジーニョとかエトーとかいた、あの時代は面白かったな」
宮本「今シーズン、バルベルデ体制で、少しやり方が変わったバルサはどう見ています?」
名波「特に、ラキティッチとイニエスタのポジション。ここの攻守の重要性がより浮き彫りになっていると思う。スアレスやメッシの決定力以上に、橋渡しとして難しい役割だよね。だけどそれがうまくいっていると、メッシが7割以上歩いていても(笑)、機能しているように見える」
宮本「メッシも昨シーズンとはまた違う役割を担いながら、結果に結びつけていますよね」
名波「本人どう思っているんだろうね? ゼロトップみたいなときもあったり、右サイドにいたときもあって、トップ下かシャドーストライカーなのか、そういうところにいるときもあって。恐らくタッチ数は5年前とさほど変わらないと思うし、運動量やシュート数も変わっていないと思うんだ。そこは変わらずに結果を出し続けているというのが、彼の凄さかな」
宮本「メッシクラスの選手も、年齢を重ねて経験値を増やし、よりサッカーを理解しているからこそそういうふうに見せられる、ということもあるんですかね」
名波「かもしれないね。俺が選手によく言うのは、難しいことを簡単に見せるのがプロだよと。メッシはまさにそうで、20代前半は無理な突破や仕掛けも多かったけど、今は、本当に花道が空いたり、体がスッと入れ替わったときにだけ、あっ、スピードが上がるな、という本気のメッシが見られる。今のほうが本来のメッシのプレースタイルのような感じがするね」
宮本「現役時代の名波さんと似たポジションの、ブスケッツはどう見られていますか」
名波「これだけミスが少なくて、これだけボールが集まってくる選手ってなかなかいない。ラキティッチや、パウリーニョが入ったときもそうだけど、前への推進力とか、前を向かせるメッセージ性のあるボールとか、常に意図が感じられる配球をして、彼らが動きやすい状況を作ろうとしているよね。一発でメッシに入れるよりも、ラキティッチ経由で、メッシに出してください、みたいに。一手先まで見えたメッセージがあると、サイドバックなんかも連動して動きやすいと思う」
宮本「2つ、3つ先を考えながらゲームを作れる人がいると大きいですね」
名波「そうだね。レアルで言ったら、モドリッチが凄くそういう色を出すかな」
宮本「レアルの話が出ましたけど、さっき出たバルサのフィロソフィーみたいなもの、レアルには感じる部分はありますか?」
名波「ジダンという監督が思い描くサッカーなら、攻撃的だろうと思うじゃない。ゴール前のシーン、崩しのシーンでいろんなアイデアを出したいんだろうな、と。だけど……実は俺、ちょっとデータを集めてきまして」
宮本「おっ、そうなんですか(笑)」
名波「ジダンが初めてクラシコを戦ったゲームだと思うんだけど……バルサのホームで、レアルが1−2で勝ってるんだ。そのときのパス数が、バルサが694本で、レアルは346本なの」
宮本「おおっ」
名波「これを、ジダンはやらなきゃいけないと感じたんだと。ボールはバルサに握らせて、自分たちは堅守ではないかもしれないけど、ショートカウンター、カウンターをイメージしたサッカーをしようと。対バルサに関しては。
そう腹をくくらないと、パス300本台という数字はなかなか出てこない。俺が調べた、他のクラシコでは全部450本くらいだもの。シュート数だって、22本撃っていることもある。攻撃的なものを捨てているわけじゃない。だけど、ジダンはこうやって腹をくくれるんだなと、このゲームで思ったね。それがCLや、もちろんリーガでも結果に反映されたんじゃないかな」
宮本「現実的な監督ということですか。本来攻撃的にやりたいにもかかわらず」
名波「と、思う。リアリストだと。だから、ハメス(・ロドリゲス)よりイスコなんだよ。昨シーズンとかイスコを重宝したのはそこじゃないかと。カウンターに入った瞬間、スッと前を向いて、時間を使わずにロナウドやベイルを使って、ベンゼマも含めたフィニッシュに行ける」
宮本「名波さんはジダン本人ともピッチ上で対戦したんですよね。しかも同い年。やっぱり攻撃的な選手だったわけじゃないですか」
名波「ものすっごい上手かった。一番上手かったね」
宮本「何が違いました?」
名波「185cmくらいあって、85kgくらいある。その体で、あんなボールの止め方するの!? という柔軟性、しなやかさ。マルセイユルーレットって言われた、回転系のプレーが多くて。ワンタッチもノールックで回転するんだけど、いつどこで見ているのかと。そして出した後もう一回、もらえる場所に入ってくる。常にゴールに向かっているな、という」
宮本「はたかれた後、うしろに入られちゃう。その意識はしていたんですか?」
名波「してたけど、あのデカさでそういうプレーはそうそう連続ではできないだろう、という固定観念がこっちもあったから。それがもう」
宮本「かわされた後に、うしろに入られる?」
名波「そう」
宮本「やっぱり寄せられないんですか?」
名波「そうだね、グーッと寄せられない。ちょっと待っちゃう感じ。あっ、もう抜かれる、とか、ワンタッチではたかれて動かれる、と思うと、寄せきれないんだ。右足も左足も遜色なくて、右ターンも左ターンも得意だから」
宮本「そんなに攻撃的だった人が、監督としてはこれだけクオリティが高い選手たちで、これだけ守備的なチームを作っている。まあ、今シーズンはリーガでは成績が上がらなくて、バルサとポイント離れていますけども。でも後半戦になって、クリスティアーノ・ロナウドの復活で持ちこたえてきましたかね」
名波「ちょっと凄いよね。固めてきた。本当に凄い」
宮本「前半戦では全然ゴール入らなかったじゃないですか。その理由は見えます?」
名波「いやあ? 本人どう思っていたのか。GKに当てるシーンが多かったり、ポスト、バーもあって。シュートが撃てているのにゴールという数字が上がらないというのは、ロナウドやメッシクラスだとどういうストレスなんだろうね?」
宮本「今まで入っていたものが急に入らなくなるというね」
名波「年間40から60点取る2人でしょ。それが1カ月で2、3点しか取れなかったときのへこみ具合。シーズン20点だと、おい少ないなロナウド、って言われちゃう。ウチのストライカーに言ってあげたいんだけど(笑)。
まあ数字のことはわからないけど、1点自分のイメージ通りに取れたら、そこから固められるんじゃないかなと。そういうところはあったと思うよ」
宮本「では、そんなことで今度のクラシコ。最後にずばり、勝敗と、さらにスコアまで予想していただけますか」
名波「うーん……1−1か、2−2のどっちかでドローかなあ」
宮本「おっと、ドローですか。バルセロナは勝つ必要もないし、ということですか?」
名波「必要なくはないけど、今シーズンの最初と比べて積み上げがあるかというと、そうでもない。今結果が出ているのは、個の力でついてきている感じもするし。すると、ロナウド復調を考えると勝つのは難しいかなと。ボールは握れると思うけど。
ロナウド、クラシコはあまり点取ってないけどね。まあメッシが凄すぎるんだけどさ。リーガの対戦だと、メッシ18点で、ロナウドも8点か……やっぱり凄いな(笑)」